【上場承認のリッチメディア】スキンケア大学のビジネスモデルを分析
7月6日、スキンケア大学を運営しているリッチメディアが東証マザースへの上場が承認されました。上場するのは8月10日で、5万株が公募されます。
リッチメディアはサイバーエージェントで新人賞をとりその後サイバーエージェントの子会社のCAテクノロジーの取締役についた坂本幸蔵氏によって2010年に設立されました。
同社は、ヘルスケア事業を主軸事業としてその中でも主な収益源になっているのが美容・健康領域のウェブメディア『スキンケア大学』になっています。
リッチメディアの事業
主な事業は2つで、それ以外にはグローバル事業とR&D事業を行っています。
・ヘルスケアサービス
├ヘルスケア大学(http://www.skincare-univ.com/healthcare/)
├スキンケア大学(http://www.skincare-univ.com/)
├メンズスキンケア大学(http://mens-skincare-univ.com/)
・ビューティー領域
├HAIR(https://hair.cm/)
├KamiMado(http://kamimado.viceviza.com/)
サービス領域別売上
http://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000011zwj-att/08RichMedia-1s.pdf
サービス領域別の売上を見ていくと、ヘルスケア領域が11億強となっており、売上のほとんどを占めるかたちになっています。
多くの売上比率を占めるヘルスケア領域の中でも本記事では、スキンケア大学のビジネスモデルとコンテンツについて分析していきます。
スキンケア大学のサイトコンセプト
下記、リッチメディアのコーポレートサイトからの引用になります。
スキンケア大学は、「お肌のことを考える=わたしの暮らしを考える」というコンセプトの美容情報サイト。お肌の状態を日常生活の結果と捉え、「お肌」「からだ」「こころ」の3つの軸で正しいスキンケアを学べる場、実践できる場を提供しております。スキンケア大学では、300名以上のドクターやビューティーアドバイザー、管理栄養士の協力のもと、信頼・安心できる情報をお届けすることで、健康な肌・美しい肌を保つ「お肌のための暮らし」を提案します。
医院情報や商品検索ではなく、スキンケアについて正しい情報を学び実践することをコンセプトに運営されています。
スキンケア大学のビジネスモデル
収益源は、主に3つで商品の広告(おそらくアフィリエイトモデル)、記事広告とスポンサー企業の公式アカウントの費用となっています。これ以外にも上記に当てはまらない広告プランや、アドセンスからの収益もありますが、上記3点が大きな収益と予想します。
コンテンツは、専門家から買うかたちで運営していますが、その記事単価や専門家との関係性は正確にはわかりません。一般的にスキンケア大学にあるような専門的なコンテンツを専門家に外注すると記事単価2万〜10万円といったところですが、スキンケア大学への顔出しでの掲載が自分自身のブランディングにつながるので、比較的安価でも執筆してもらえる可能性はあります。このあたりは、スキンケア大学の魅力(PVやブランドイメージ)と専門家の権威(知名度、ライターとしてのスキル)のバランスで決まってくるかもしません。
スキンケア大学のコンテンツ
コンテンツの構成は下記のようになっています。
スキンケア講座
└スキンケアに関する悩みを解決するコンテンツの提供。
セルフチェック
二択の質問形式で生活習慣などについてのセルフチェックを行い、それぞれに対するアドバイスがもらえる。専門家の監修コンテンツ。
美ログ
基本的にはスキンケア講座と同じように、スキンケアに関する悩みを解決するコンテンツ。ただ、美ログの方が執筆者が前面に出ている。
美肌レシピ
専門家が提唱する美容に効果的なレシピの紹介。医学的な解説もある。
商品検索
美容関連商品の紹介をしているページ。成分の解説が細かくされている。リンク先は各メーカーサイトになっており、おそらくアフィリエイトモデルとなっている。
記事広告
広告ではあるが、どれもプロからの解説という形式になっている。
公式アカウント
美容関連用品メーカーや、ヘルス関連企業がスポンサーのよなかたちで公式アカウントを持っている。ニュースやインタビューのコンテンツがあり、ユーザーの獲得というよりはブランディングの価値の方が大きい印象。
スキンケア大学は『権威・ストック型』のウェブメディア
上記の通り、細かくコンテンツの構成を見ていく中で最も特徴的なのが徹底して専門家から発信する情報でメディアを作っている点です。コラムやレシピも専門家の名前とともに深い知見が盛り込まれています。記事広告も専門家からの解説で構成されており、メディアの権威性を保つこだわりが伺えます。
サイト内にある情報としてはストック型(比較的普遍的な情報で時間とともに情報の価値は下がらない)のものがほとんどで、ユーザーは比較的明確な悩みを抱えている中で一定の「正解」を求めてスキンケア大学のコンテンツを閲覧していることが予想されます。
本記事ではSEOの状況については触れていませんが、ストック型のコンテンツは主に検索エンジンからの流入が多く、悩み系のロングテールワードで獲得していることがよそうできます。
フロー型コンテンツとCGM機能でさらにスケールの余地はある?
権威・ストック型で形成されたメディアではあるが、一部フローコンテンツとCGM機能でよりユーザーの定着と獲得ができる可能性はあります。明確な悩みはなくても、毎日更新される「今が旬のネタ」を配信することでメリーや4meee!のような感覚でサイトに訪れるユーザーは増える可能性はあります。ただ、あくまでも権威性を落とさないコンテンツとなるとテーマは若干難しいかもしれません。
CGM機能に関しては、あくまでも権威あるコンテンツの+αという立ち位置で配置するか、全く別のカテゴリでユーザーの声のコーナーがあったらユーザーの理解や購買モチベーションは上がるかもしれません。
ライターリソースとメディア価値のバランス
コンテンツに対する時間・的金銭的コストに関しては、直接的な費用対効果が測りにくい部分であるためどうしても手間もお金もかけずにコンテンツを生産してしまいがちですが、スキンケア大学のようにメディアコンセプトに沿ってより有益な情報を配信することは基本的なことであるとともに、難しい問題です。
ライターネットワーク、社内の知見、ユーザーによるコンテンツ生産の仕組み化などの自社のコンテンツ生産の資産がメディア価値と収益性につながってきます。
スキンケア大学は専門家のネットワークが資産であり、競争優位性になっています。ただ、コンテンツ原価に関しては決して安いとは言えない状況でどのように発展していくかを今後も見ていきたいと思います。